2006-08-07

「ナガサキのおばあちゃん」  高橋 克雄      金の星社 ¥1,200.

 副題に「Memories of My Granma」、見開きには <昭和二十年八月九日 原爆により爆死した家族、命日を共にした学友たち、数え切れない多くの人々の 失われた愛と生命(いのち)をしのんで捧げます。> とあります。

ケンちゃんと親友のタキもっちゃん、ミカちゃん。ケンちゃんのおばあちゃん。あなたや私と同じような子ども達の日常。ケンちゃんの父親は四歳の時に平壤で重い胸の病で亡くなり、ケンちゃんを置いて看病に行っていた母親はその後望まれてかの地で再婚。ケンちゃんは長崎のおばあちゃんに引き取られ一緒に暮らしている。再婚して直ぐにケンちゃんを引き取りたいという母親におばあちゃんは「ばってん...朝鮮は、いくら日本じゃ言うても、もともと外国じゃなかね.....」といって、結局三年生まで、長崎の港を見下ろす西坂の丘の中腹にある南京下見張りの幸福そうな二階建ての家で暮らし続けている。
 ケンちゃんが 迎えにきた母親と平壤に旅立ったのは、昭和16年の夏、「...この年の十二月、日本は真珠湾を攻撃、中国だけでなくアメリカ・イギリス・オランダなどの連合軍を相手に大きな戦争をはじめました。...」

このように、さりげなく子供たちの目の高さの言葉での文章が続く。三人の仲良しは二十六聖人の中の三つの小さい十字架に自分達と同じ仲良しを重ね合わせ、義兄弟の誓いをする。ケンちゃんとはそれきりで、昭和二十年八月九日になる。タキもっちゃんはケンちゃんのおばあちゃんの家で十一時二分を迎える。浦上で爆弾の真下にいたミカちゃんは地獄の中を線路伝いに長崎駅近くの我が家まで辿り着き、炎と煙の街を見る。それから丘の中腹のケンちゃんのおばあちゃんチへ.....

 タキもっちゃんは命を助かり、 白髪の老人になったいま 毎年あの日になると車椅子に乗って、ケンちゃんのおばあちゃんチの辺りから海を見ている。
 大きな活字で総ルビ。そうです、この本は子供たちへの本です。もしかしたらタキもっちゃんが書いたのかも知れません。戦争についての批判も、原爆にあったミカちゃんがかわいそうとか痛そうとか そんな言葉は一つもありません。穏やかに静かに、あなたや私が小さい時の事を話すように、あの日を迎えた長崎の子供たちの話をしています。穏やかに静かに。           2006年 八月 九日

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