東洋・西洋・新世界の龍を分析。編者は国際日本文化研究センターの教授であり、これは二つ目の共同研究の成果である。安田氏は気候変動を中心に据えた環境文明史で多くの著書があり、広い分野に少なからぬ影響を与えた、と私は理解している。
龍の文明史・安田喜憲/大河文明の生んだ怪獣・荒川紘/西洋のドラゴンと東洋の龍・田中英道/操舵櫌・伊東清司/龍の起源・李国棟/龍をめぐる神話・百田弥栄子/シャーマニズムから見た龍蛇と鳥と柱・萩原秀三郎/龍蛇と宇宙樹のフォークロア・金田久璋/メソアメリカ文明における龍蛇信仰・高山智博。確かに総花的に龍について学ぶには格好の書ではある。
うぬと言わせる力作あり、またとりあえず手持ちの薀蓄を纏めた感ありの論文と、いわば言いすぎかも知れないが 玉石混交のように思われるのである。これが共同研究の成果を」まとめたものの恐ろしさであろう。三つの世界の空飛ぶ長虫状の生き物についての比較文明論があればとの感想を持ったのは無いものねだりなのか。ともあれ、薦めるに値する一冊ではある。
思うに 西洋の龍はドラゴンで四肢(手と足)があり、空を飛ぶが地べたも歩き火を吹く。これは両生類だろう。それに彼らの現しているのは善としての姿ではない。攻撃の対象であり、亡ぼされるべき生き物なのである。
新世界のは翼ある蛇とよばれる。東洋の龍地べたは歩かない、ひたすら宙にいる。聖なる存在である。個々の論証はあるが比較が無いというのはこのことなのである。
2006-08-07
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