副題に「海洋生態系を支える微小生物の世界」とある。著者は「はじめに」でつぎのように記している。
「はじめに」が面白ければ本文も面白い、その通り!
右図:カンブリア紀末期のオルステン動物群の生態図
左図:深海のカイアシ類
A・カイアシ類を襲う肉食性
ヘテロラブドゥス属
「生物のヒトに至る複雑化・高度化を“タテ”の進化とすれば、カイアシ類のように多様化によって地球生命圏にあまねくはびこる生命は“水平進化”という戦略を選んだのではないだろうか。われわれヒトが知性を得てからは、まだたった10万年にすぎない。しかし、すでに地球環境に大きな影響を与え、自滅の兆候さえある。一方、カイアシ類は四億年以上のたゆみなき多様化に道をたどり、ヒトが絶滅した後も地球にはびこり続けるだろう。」
では、そのカイアシ類とは一体どんな生物なのか。要約してみる。...海では動物プランクトンとして最も生物量(バイオマス)が多いものの一つで、通常、プランクトンサンプルの総固体数の7~8割を占めるほど圧倒的に優占する。
プランクトン? 水中を漂う生き物の総称で、大きさは1m、重さ200kgにもなるエチゼンクラゲから、数マイクロメートル以下のバクテリアなども包合する。つまり、大きさでなくその遊泳能力で定義されており、遊泳能力がゼロか、ごくわずかな水中浮遊生物群の総称。
カイアシ類は海洋微小甲殻類で、大きいもので1cmぐらい、普通は1~2mm。東南アジア・ヨーロッパでは地方食とされているが、日本では同じプランクトンのアミ・オキアミ以外は食さない。魚類は、特にサンマ・イワシは一生カイアシ類を食べ続ける。シラスの腹部の赤い点が甲殻類カイアシの入っている胃袋だ。生息場所はヒマラヤの氷河から湖沼・田んぼ・地下水・古タイヤに溜まった水溜りから水深1万mの深海など、ありとあらゆる水圏に進出している。その中には魚介類に寄生する種類もあり、養殖場では被害も出ている。
食事:雑食性、つまり何でも食べる。数マイクロメートル~体長の20~30%前後の大きさの別の種類のカイアシ類の卵・繊毛虫などの原生動物・植物プランクトン・マリンスノー。
休眠する卵!:300年たって目を覚ました例有り。この休眠卵は乾燥・高湿・低温に強く、常温で25年耐えられる種もいる。
成長段階:受精してから成体まで基本的に12ステージ。成体になってからは脱皮しないで成長が打ち止 めとなる。
カイアシ類の眼:現生種のカイアシ類には複眼がなく、通常単眼のみを備える。結像する機能は持たないと推定。深海性カイアシ類の眼は広範な波長の光を効率よくキャッチする集光器と分析されている。視覚 以外の感覚器官を特化した動物であり、このおかげで光のない世界にもおおいに進出した。
運動能力:浮遊性のプランクトンであるのに、捕食者から逃げるために、海面から15cmもジャンプする。たいしたことないって! とんでもない。体長2~3mmのカイアシ類からみれば体長の50倍だ。
最古のカイアシ類の化石:一億二千万年~一億七千万年前、ブラジル白亜紀前期の汽水産硬骨魚化石の鰓腔に寄生していたのが見つかっているという。彼は寄生性カイアシで体長1mm、現生の分類群におさまるのだそうだ。彼らはいってみればカブトガニたちと同様生きた化石なのだ!
さあ、ページを開いて、本文に進もう。
著者のいう奇妙奇天烈な生物の驚天動地の世界へ...
2006-11-05
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